創作

―雪―

君の声が 耳に残る 移ろいゆく 季節の中 手紙も書けずに 想い出だけが 僕を慰める 二人並んで 映った写真 君が笑っている 窓の外 降り積もる雪 白い息で 曇る硝子に 君の名前 書いては消して 遠い距離は 埋められないから せめて 目を閉じるよ 休む暇ない 日…

今日も今日とて

あの人のことを考えていた 会話のひとつひとつ、そのニュアンスをはかりかねている。

傘の中

昼ごろから空気の匂いが怪しかったが、帰るころには雨がしとしとと降っていた。朝出る直前くらいまでは「傘を持っていく」ことを意識していたはずなのに、電車に乗ったころに、手ぶらであることに違和感を覚えて、"やってしまった"ことに気づいた。帰宅まで…

試作(または思索)

―あまり人になじめるほうじゃないから、相手になかなか心を開けないんだ でもこの人なら、って思って精一杯気持ちを伝えようとするときもあるんだけど、 そういうときに限って、相手のほうから離れていってしまっている気がする ―本当に心を許したい人に限っ…

試作

ボロボロの、ほとんど布一枚をまとっただけのような格好をした男が、なにかをボソボソとなにかつぶやいている。彼は詩人。日が西に傾く頃に、こうして路上に立ち自分の詩を朗読している。石畳の上にマグカップが置いてある。足を止めるものはいない。 夜の帳…

待ち合わせには早い時間に行くもんじゃない

シブヤハチコー前19:30。 それだけの情報で、路線検索の時間より1時間くらい早めに出発したが、有名な場所だし、まず迷うことはないだろうと高を括っていた。ホームに下りた瞬間からどっちの方向に進めばいいかわからなくなる。人ごみを縫うように進ん…

On and On

たむらくん(仮名)がなぁ たむらくん(仮名)がなぁ 彼女が"THE 幸福"というような顔で話す瑣末なエピソードに「へー、そうなんだー」とか適当な相づちを打ったり、いちいちうなずきながら聞いている。そうそう、ささやかな笑顔も忘れずにね。 彼女は本当に…

休日

さびしがりやだなんて みとめたくないものだね 「ひとりではいきていけない」だなんて そんなよわっちろい いきものでなんかないよ ぼくぁ まどのそとから ひとのこえや くるまのおと ふいに あるはずもない なつかしいにおいが はなのさきをよぎったって あ…

ある坊

おや あんなところにひざをかかへた坊がいるぢゃないか 死んだ魚のやうな うつろな目をした ずいぶんとさびしさうな 坊がいるぢゃないか 坊よ どんなうらぎりや 無関心に 戸惑ひ さいなまれやうと よのなかをうらんではいけないよ まわりをねたんではいけな…

I Saw The Light

―あ゛ヾ〜なんでオレはモテないんだっ! 日長そんな思いに駆られている。いやモテないだけならいいんだ。 会う女会う女皆が皆、自分を嫌っているように感じる。 オレが何かしたか?アレか?コレか?いやどう考えてもオレはそんな嫌がられるようなことはして…

かまきり

食人賞 - ファック文芸部

ベランダ

うっかり1ヶ月くらい干してなかった布団をベランダに出した。 陽気がやさしくなり、それがあたるやいなやあたたかさと柔らかさを含んだ布団に、つい寄りかかってしまった。 昨日のことをずっと考えている。 鈍い後悔がたまっているのか、単にタバコの吸いす…

空が燃えている

外から聞こえてくる爆発音が、体に響いてくる。 花火大会はもうすでに始まっている。

おっ、オレいまいいこと言うた

なにかキメっぽい一言をかました後によくそう言う友人がいたんだが、そういったときの発言に限ってまったく印象に残ってない。 だけど、こっちがものすごくへこんでいて、どうしようもなくウジウジしていたときに言われた一言は、妙に脳裏に焼きついている。…

午前4時

眠れない夜はハ長調 シャープもフラットもなく 素直な音階が流れている ホットミルクの入ったマグを両手で包み 窓越しに 少し欠けた月を仰ぐ それは深い夜への挨拶のようなもの 「静けさ」という音楽に耳を澄ませながら 僕は心の底から 「はてなTシャツ欲し…

一輪車

最近クラスで一輪車に乗るのがはやっていて、業間休みや昼休みになると、全校で30個くらいしかない一輪車が、チャイムとほぼ同時に"売り切れ"になってしまうくらいだ。 僕も友達と誘い合って、うまく一輪車をとれたときに練習した。でも、鉄棒につかまって…

僕はメンクイです

あなたの"顔"が好きです あなたがどんなときに笑うのか あなたがどんなときにおこってみせるのか を知ってから あなたの声や 零す言葉が あなたの匂いや ひとつひとつの所作が 僕をどんなに惑わせるのか を知ってから 僕は あなたの"顔"が とても好きです <…

こおり

まだ春のつもりでいると少々暑いが、夏というにはまだ日差しが弱い。それでもじっとしているだけでジットリ汗ばんでくる、そんな昼下がり。 ノートPCのモニタを見つめていると、彼女がお茶を持ってきてくれた。 「ありがとう」とマグカップを取ろうと目をや…

The Boxer

中学生でギターを覚えた。おじが使わなくなったものを譲り受けたんである。 鉄の弦に指を切りそうになりながら、なんとかセーハ*1で音が出るようになった。 *1:左人差し指の腹で、6本の弦を同時に押さえること。ギター弾きなら常識。

私信

学生時代を過ごした街をたまに訪れるたびに、 微かだが見過ごせない違和感を覚える。 以前レコード店だったところがテレクラになってたり、 毎週通っていた映画館が廃業していたりしているが、 そういうわかりやすい部分ではなく、 皮膚感覚的なもの。 その…

泳ぐために必要なこと

「浮くことができれば、泳げます」 別コースで泳いでいた僕の耳に、インストラクターの言葉が響いた。 僕自身は泳げるようになるまでに苦労した記憶はなく、最初から自然と水に浮くことができていたように記憶している。 だから、完全にその気持ちがわかるわ…

鳥のはらわた

道端に、鳥の死骸があった。 一目にはわからなかったが、流線型の身体と羽根でそれとわかる。 「ああ、こりゃ猫だねぇ」 通り過ぎる人の声が聞こえる。 直視するのがためらわれたが、よく見るとそれほど嫌感を覚えないのが、違和感を誘う。 鳥のはらわたは空…

中2っぽいこと書いてみたかったわけだが

「やばい」 と感じてとっさに飛び起きて、おそるおそる指先で確かめてみる。多少漏れ出したみたいだが、大惨事には至っていない。よかった。 起きだして洗ったほうがいいか、これくらいなら気にすることないか。夜中に水の音が聞こえてきたら、親が不審に思…

Private Records 音源置き場

いらっしゃいませ、ふじっこさんの音源はこちらです。 Private Records(yahoo box) いまのところ下記の音源が掲載されています。 「Pandora」(1st Album 13tracks) 「Hidden Cage」(2nd Album 12tracks) なお、フル試聴がSoundCloudでできますので、興味…