こおり

まだ春のつもりでいると少々暑いが、夏というにはまだ日差しが弱い。それでもじっとしているだけでジットリ汗ばんでくる、そんな昼下がり。
ノートPCのモニタを見つめていると、彼女がお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう」とマグカップを取ろうと目をやると、二つあるうちの彼女の方のお茶には氷が浮かんでいる。
「あ、いいなあ、こおり・・・」
とつぶやくと、
「え、入れてほしかった?待ってて」
といって、彼女は僕のマグカップだけを持って、また台所へ戻っていく。
「あ、いい、うん、ごめん、ありがとう」と煮え切らないような返事をしながら、そのあとをいそいそとついていき、彼女の手元をのぞく。
彼女の髪から、石鹸の残り香が漂う。


彼女が可笑しそうにクスクスしたのを見て、ふと明日までの書類を作っていたのを思い出し、あわててPCの前に戻っていく。
さっきの言い方は少し子どもっぽかったかなあ、と頭をかきながら。


彼女が戻ってきて、僕の机にマグカップを置く。お茶に浮かんだ氷は、熱かったなかに入れたせいか、もうだいぶ小さくなっている。飲んでみるとあんまり冷えてないけど、そんなんでも、なんとなく顔がほころんでしまう。
窓の外に目をやると、その先に、本を読んでいる彼女がいる。目が合って「ん?」という感じでこっちを見てるから、「んーん」と首を軽く振って、またモニタに向かう。

夏はアイスで
「イェーイ!OH茶!玉露入り」粉末タイプ